このページでは、ストックカークラス出場を前提に、ドローム特有の車両製作に関するノウハウをご紹介します。
なお、ここで紹介しているノウハウは「ドロームを十分楽しむためにはこのくらいは必要」程度のレベルです。各カテゴリーでトップを争うためのノウハウではないのであらかじめご了承下さい。
ストックカークラスとスーパートラッククラスは、1/10電動DDカーの中でも「ナロー」と呼ばれる200mm前後の全幅のシャシーで争われます。
このクラスで国内で簡単に手に入るシャシーというと、アソシRC10-L4O や HPI RS10-GO、トリニティスイッチブレード10SS などの所謂「オーバル用」として市販されているシャシーと言うことになります。
現在の日本では特殊なシャシーなので、多くの方が『ドローム専用』シャシーになってしまうことでしょうが、この形式のシャシーで今さら革新的な新型シャシーが発表される可能性はほとんどないので、同じシャシーを何年も使えます。近年の高額化したハイエンドツーリングカーを毎年のように買い換えることを思えば、シャシーに関しては非常にリーズナブルと言えます。
上は実際にドロームで使用されているシャシーですので、オーナーが好みの改造を施していることがほとんどです。それぞれ画像をクリックすると別ウィンドウに大きな画像が表示されます。(ストックカークラスとスーパートラッククラスはシャシーに関してはほぼ同じなので、画像にはトラッククラスのものも入っています)
多くの選手がメインシャシーを自作したり他社シャシーの部品を流用したりするため、筆者にもそれぞれのシャシーがもともと何という製品だったか判別はできません。
また上記以外に パーマPHASE1 や BSR HYPERDRIVE など、国内ではなかなか見ることのできないシャシーも使用されていますし、タミヤF103の改造車にこだわって使用している選手もいます。
基本的にはどのシャシーを選んでもパフォーマンスに決定的な差はありません。入手しやすさやこだわりなど、参加車がそれぞれの理由で選んでいるだけです。
RC World誌のドローム紹介記事にはよく凝った自作車が紹介されています。筆者自身も自作車を使用していますが、あれらは各自のこだわりから出場しているだけで、ドローム専用に設計した自作車でなければ出場できないとか、好成績を上げられないとかいうことは全くありません。
ドローム仕様といっても上のシャシーを見ていただければわかるように特に「絶対にこう改造しなければいけない」というようなことはありません。
ただ走る速度が速度なので、いつも以上に基本にそって正確に、ガタを少なく、サス類の動きをスムーズに組み立てる必要があるだけです。
特にDDカーを使用するクラスに関しては、リアアクセル周りの組み立て精度でシャフトの回転抵抗がまるで違います。組み立てた後、タイヤを着けてモーターを外した状態でリアアクスルが出来るだけ軽く回転するように、ベアリング支持部の微調整をしながら組み立てて下さい。
その他のポイントを下記にまとめておきます。
- タイヤ選択とタイヤバランス
タイヤはもう定番と言っていいものがあります。
BSR 社製のメッシュ入りキャップドタイヤ。これはホイルに接着済みの完成品で販売されています。
リアはナロー幅でコンパウンドはゴールド/ピンクのいずれか。フロントはシルバー/ピンク/ゴールドのいずれかを使用するのが定番になっています。
高価なキャップドタイヤですが、これ以外の選択(たとえばツーリングカー用タイヤを使ったり)をするのはかなり大きなリスクを背負うことになるので、あえてチャレンジしたいという人以外にはおすすめできません。
BSR 社製タイヤのコンパウンドに関してはこちらでご確認下さい。
なおタイヤはタイヤバランスを取るのが不可欠です。
これをやるのとやらないのとで「最後のひと伸びが違う」とすら言われています。
- バッテリーの搭載位置
オーバル専用ということでバッテリーを車体左側に寄せて搭載するシャシーが多く見られますが、ドロームのハイバンク走行ではそれほど圧倒的なアドバンテージはありません。
ドライバーの好みであえて振り分けで左右対称に搭載したり、左にオフセットするにしてもできるだけ中央寄りに搭載する選手が多いです。
- ボディの固定
ハイバンクオーバルコースでの超高速走行では強い縦Gがかかります。
Gでボディがたわんでしまうと空力的に不安定になることも考えられるので、ボディの固定はしっかりと行うことが絶対条件です。
車体中央、ちょうどボディの運転席の前あたりに五本目のボディマウントを立てたり、シャシーから横に張り出してボディの側面とマジックテープで固定するボディステフナーを装着しているシャシーもあります。
- ギア比は 1.6 前後
ギア比は 1.6 を中心に、1.5から1.7位の範囲でできるだけ細かい組み合わせができるようにピニオンギアとスパーギアを用意すればよいでしょう。
路面状況などによって微妙に最適な減速比が変化します。
- デフの調整
普通です。真っ直ぐ走るだけだからといって締め込んではいけません。
- 車高の調整
かなり高めにセッティングします。
特殊な舗装を痛めないように、シャシーやボディが路面と干渉するとその場で走行停止を命じられますし、下げてもあまりいいことはありません。
前後とも5mm以上というのがレギュレーションですが、筆者は8mmくらいの高さにしています。
- サスペンションの調整
変わっているのはロール方向のスプリングをすごく硬くすることです。上の画像を見ても、ロール側のスプリングは皆レッド(アソシVSDショック用の一番硬いもの)を使っているシャシーが多いのがわかると思います。
ロール側が柔らかいと、バンク走行中に徐々にアウト側にふくらんでいってしまうようです。
サスペンションの調整に関しては、できれば長い直線を取れる場所で試走して決めたいところです。この辺りは、『セッティングとテスト走行』の項で筆者にわかる範囲で触れたいと思います。
この中で特にわかりにくいのが<カラーリング>の項。
『実車に準じたモノが望ましい』としかありませんが、別に必ず実車に準じなければいけないというわけではありません。ただ、NASCAR系のレースカーのペイントにはお約束があるので、それだけは守っておかないと、当日ピストで違和感のある一台になってしまいます。
間違ってもヨーロッパや日本のレースカーのペイントを参考にしないように。
お約束 その一 | 左右ドア部と屋根にデカいゼッケン。(屋根のは左側が下) | |
お約束 その二 | ボンネットにハデなメインスポンサーのマーク |
お約束 その三 | フロントホイルアーチ前後(赤色の部分)にオフィシャルサプライヤーのロゴ。 ホイルアーチ上は"GOODYEAR"の定位置。 |
お約束 その四 | 塗装色は基本的に原色系 |
左はアメリカンレースを専門にあつかったムックや、レースプログラムです。大きな書店の洋雑誌コーナーに行けば、1冊や2冊はアメリカンモータースポーツを扱った雑誌があるはずです。
また、メニューページからリンクしてある各レース主催者のホームページに行けば、様々なカラーリングのサンプルを見ることが出来ます。
これらから好きなカラーを選ぶか、これらを参考にしてカッコいいカラーを考えてください。
さて、ボディを用意します。
ここで注意しなければならないのは、ボディの空気抵抗と強度です。
少しでもスピードを稼ぐためには空気抵抗が問題になり、バンク上での強大なダウンフォースに対抗するためにはボディの強度が必要になります。
右画像の左に写っているボディは筆者が97年に使用したPARMA製ポンティアックで、右が98年のPROTOform製シェビーHSです。
画像の下に書いてあるように、シェビーの方が全幅が狭く、空気抵抗が少ないです。わずかなことですが見逃せません。(2002年現在、このHSボディは生産中止になっているようで入手はかなり困難になっています。)
画像にはありませんが、PROTOformからHD(ハイダウンフォース)と呼ばれるリア210mmのボディが、またHOTBODYS社からはLP(ロープロファイル)というリア210mmのまま全高の低いボディも登場しています。
なお各社ボディで、形状が同じものでボディ自体が薄い LIGHT WEIGHT と REGULAR WEIGHT とがリリースされている場合がありますが、これは強度を考えて REGULAR WEIGHT を選ぶのがいいでしょう。
あとはどのシリーズ、ボディを選ぶかは各自の好みです。お気に入りのボディを選んで下さい。
上の画像のように、ボディ後部は完全に切り取ってしまいます。
ボディ内部に空気をためず後ろに逃がすことで、ドラッグが減り、さらにダウンフォースも大きくなるためです。
これをやるとやらないとでは大きく差がありますので必ずカットしましょう。
さて、ウィングとウィングステーの製作です。
ストックカークラスではボディの全長/全幅の範囲で透明のウィングの使用が認められています。
バンク上を走行するワールドドロームでは、遠心力によるGがダウンフォースとして働くので下向きの力はそれほど必要ではありませんが、垂直翼端板が生み出す強大な直進安定性は無視できません。これは絶対に使うべきです。
ほとんどの参加者が、シャシー加工の項で上げたキンブロー製のクリアウィングを加工して使います。
実際はレギュレーションで透明であることが決められているウィングですが、右の3D画像はわかりやすいように色を付けてあります。
左図で赤色の部分を切り取ってしまいます。これは、ダウンフォースを減らしてでも空気抵抗を減らしたいためで、巨大な翼端板は上に書いた理由でそのまま残します。
これをピアノ線を介してボディに直接固定するのが、ドローム流。
ウィングボタンのための穴は自分で開けなければなりません。ポリカーボ製のウィングですが、赤色の部分を切り取ると案外たわみやすいので、ウィングステーはできるだけ翼端板に近い方が安心です。
ウィング以外に用意するモノは、下の3つ。
・2mmもしくは1.5mmのピアノ線。長さ適当。
・ウィングボタン2セット(4個)
・ラジコン飛行機用に売られている2mmのロッドストッパー2セット(4個)
これらを右図のようにセットして、ウィングを固定します。
ピアノ線も2mmとなると、ただペンチでひねっただけでは曲がってくれません。(特に後端の直角に曲げる部分)
ここは、目立てヤスリで切り込みを入れて、折らないようにゆっくりと曲げましょう。
以上でボディ関係の加工で特に注意する点は終わりです。