ここで紹介しているノウハウは「ドロームを十分楽しむためにはこのくらいは必要」程度のレベルです。各カテゴリーでトップを争うためのノウハウではないのであらかじめご了承下さい。
なお筆者はこのクラスに出場したことがありませんので、このページのノウハウは複数の出場選手に協力していただきました。
2006年から開催されるようになったトランザムクラスは、費用面でもノウハウの面でも手軽にドロームを体験してもらいたいという配慮から生まれた新しいクラスです。
主にノウハウ面での手軽さを狙って、シャシー/モーター/アンプ/バッテリーそしてボディまでワンメイクになっています。
ブラシレスモーターやLipoバッテリーはメンテナンス不要で取り扱いが簡単なため、参加者によると「クラッシュさえしなければ、ヒート間のメンテナンスはバッテリーを充電する以外にやることがない」と言うほど。
またボディに関しては毎年指定モデルが変更されるため、その空力特性によってまったくセッティングが変わってしまい、毎年新しいセッティングノウハウが必要になります。2006年(右画像の上/HPIバイパーGTR)と2007年(右画像の下/HPIマスタング1966)の開催でモーターおよびボディは両極端な特性になっており、ここではその2回を比較することで共通の要素を見つけだそうとしています。2008年以降どんな特性のボディが指定されるかわかりませんので、あくまで参考程度にとどめてください。
シャシーにはタミヤのF103GTシャシーが指定されています。
オプションパーツは社外品や自作品も認められていますが、ノーマルでも特に問題はありません。ただノーマルはシャシーのピッチング強度を確保するためにノーマルのアッパーデッキ、サーボステーも含めて強度を得ています。
ドロームの45度バンクでは、想像以上に大きい縦Gがかかるので、シャシーのピッチング剛性は大変重要です。なのでアッパーデッキやサーボステーを変更する場合はピッチング方向(縦方向)のたわみが少なくなるように工夫すると良いでしょう。OPのカーボンシャーシはおススメです。なお下画像のシャシーでは、シャシーのピッチング剛性を確保するためにアッパーデッキからフロントサス基部までトルクロッドを増設する改造が行われています。
右画像は2007年にある選手が実際に使用したシャシーです。
画像をクリックすると大きな画像が表示されます。
以下に、ノーマル以外で特にドローム仕様として効果が高いオプションパーツを紹介します。
・リアボディマウント
TECHまたは3Racingから発売されている、タミヤボディノーマル穴位置にポストを配置できるボディマウントはおススメです。転倒時にピスト路面に引っかからないためにも、装着を推奨します。
・Tバー
ノーマルではやや柔らかすぎるようです。カワダのF103GT用Tバー(グラスファイバー)がピッチ、ロールともに良好です。白っぽいナチュラルカラーのFRPというところが、DD車らしくて好感が持てます。推奨です。
取付方法はノーマルと同じでOKです。締め込みは強めでOKです。
・ピッチングダンパー
オイルダンパーが推奨です。バネはかなり硬いものが推奨です。硬いバネを使いたいが為のオイルダンパーという感じでしょうか。タミヤならホワイト、アソシゴールドなどになると思います。オイルは2穴500番前後、とはいってもあくまで目安で「ノーマルは柔らかすぎるのでしっかりTバーのシナリを受け止められる減衰強めが良い」という程度です。
・サーボセイバー
タミヤのハイトルクサーボセイバーかキンブローのサーボセイバーがおススメです。
トランザムクラスの最大の特徴が、モーターとバッテリーのワンメイク、そしてギア比の指定です。この三つが指定されているためトップスピードに決定的な差が出ず、結果的に抜きつ抜かれつのバトルが展開されるのです。
モーターとバッテリーは、enRoute社製のブラシレスモーターとLipoバッテリーが指定されています。
ブラシレスモーターはこれまでのブラシ付きモーターと違い、チューンアップなどができませんし、基本的にメンテナンスフリーです。また、Lipoバッテリーは使用後放電せずにそのまま継ぎ足し充電をしても性能が低下しないので、一本のバッテリーで全てのヒートを走ることができます。
この二つの理由により、このクラスは「クラッシュして修理の必要がない限り、ヒート間にやることといえばバッテリーの充電だけ」と言われるほど手間いらずになっています。
指定どおりの使い方で十分性能を発揮します。走行前に追い充電したり、モーターを叩いたりしないようにしましょう。悪化します。
ドロームの特殊な環境に適応するためには通常のサーキットでは考えられない特殊なセッティングが必要になります。
・フロントサスペンション
サスペンションがボトムした時にシャシーが路面に接触する可能性があるため、フロントサスペンションは通常のサーキット走行では考えられないようなセッティングを施します。
右画像をご覧ください。
キングピンの上下にスペーサーを挟むことで、スプリングが殆どつぶれるぐらい(ロアアームの穴の中に納まってしまうぐらい)ストロークを規制しています。
丸いOリングではスプリングが内側に潜り込んでしまう可能性があるので、京商のXリング(赤)を使ったり、ワッシャでOリングの上下を挟むなどして、スプリングやキングピンのEリングがしっかり効くようにするのがポイントです。
またちょっと裏技っぽいですが、GPカー用の燃料チューブを切ってキングピンに通すという手もあります。(画像の下側)
スプリングがわずかに効く程度(1〜0.5mmストローク)がステアリング特性も良いようです(アンダー傾向になります)
・フリクションプレート
ボディによってアンダー、オーバーがまったく変わってきます。
オーバーステアでステアリングがシビアな場合は硬いグリスでフリクション強め(2007年フォードマスタング1966の場合)
アンダーステアで曲がらない場合は柔らかいグリスでフリクション弱め(2006年バイパーGTRの場合)になるでしょう。
・車高
最低5mm以上、フルボトムで接触しないこと、というレギュレーションをクリアするためにフロントタイヤの径には注意しましょう。
小さいタイヤに変更した場合、ナックル上下のスペーサーで必ず調整します。リアの車高はフロントタイヤに合わせて、ややリア上がりになるようにベアリングホルダーで調整します。
・冷却
これも最終的には決定されたパワーソース次第ですが、ブラシレスシステムは空転の低負荷でも回せば発熱するので本番前にチェックできます。なので、まず1分ほどベンチテストで空転させてみて、熱くなるようでしたらファンの装着を推奨します。2006年の指定アイテムではモーターが、2007年での指定アイテムではESCが発熱したので、それぞれ冷却ファンを装着したところ本番4分でもほとんどパワーダウンを起こしませんでした。装着する場合は「とりおんいちまん++」のような強力なファンを推奨します。RC用の電圧、サイズではなかなか実用的なファンが無いのです。
・リアタイヤ
基本的にはほとんどのゴムタイヤで走行可能・・・なのですが、ギア比が固定されている関係で、タイムアタックを狙うならリアタイヤの直径をレギュレーションギリギリまで大きくすることがポイントになります。ナロータイヤが推奨です。
例
「タミヤ ファイバーモールドB + タミヤモールドインナーハード」> やや67mmオーバー(セッターで削る)
「HPI TQベルテッドXラジアル + タミヤモールドインナーハード」= ギリギリ
「各社ミディアムナロータイヤ」< 小さい
GPツーリングカー用スポンジタイヤをインナーとして使い、インディカーで行われているような「ハチマキタイヤ」を自作する方法もあります。
どの場合でも硬いインナー+タイヤセッター+ヤスリで66.8mmを目指しましょう。
・フロントタイヤ
これもボディによって大きく変化する要素です。リアタイヤは直径の関係で選択肢が少ないので、特性をフロントタイヤで調整します。
オーバーステアでステアリングがシビアな場合・・・小径でグリップの低いタイヤを利用する(2007年フォードマスタング1966)
例:リア HPI TQベルテッドXラジアル+タミヤモールドインナーハード、フロント シミズG32+タミヤモールドインナーハード
アンダーステアでステアリングが効かない場合・・・リアタイヤと同じものを利用する(2006年バイパーGTR)
例:前後 HPI TQベルテッドXラジアル+タミヤモールドインナーハード
・組み立て
接着さえしっかりしていればノーメッシュのタイヤ(HPIビンテージタイヤ)でも特に走行は問題ありませんでした。グリップの低いベルテッドタイヤ?というのがなかなかテストしきれないので、ノーメッシュのタミヤ500円タイヤなども選択肢にいれてよいかと思います。
タイヤバランスは必ず取ります。超高速走行が続くドロームでは、タイヤバランスの影響が大きく出ます。
セッティングでどうしても巻いてしまう場合、フロントにGPツーリングカー用のスポンジタイヤ(35〜42度)(アクティブホビーのF103GT用もOK)を使うことで大幅に特性をアンダーに持っていくことが出来ます。修善寺ピストではスポンジタイヤがグリップしないからです。しかしすっぽ抜けないので緊急時の回避はできます。最後の手段として持っていても良いかと思います。もともと車重が軽いためゴムタイヤのコンパウンド差が出にくく、ゴムタイヤでは調整しきれない場合です。
ただアメリカントランザムカーの「雰囲気」的に、どのタイヤの場合でもメッキスポークホイルを推奨したいです(笑)
トレッド変化もあまりシビアではないので「ボディにあわせる」が推奨です。(ボディに接触は厳禁ですのでツライチは厳しいでしょうが近づけるほうがかっこいいです)
トランザムクラスのボディはワンメイクですが、モデルは毎年変更されます。どのボディにも共通したポイントとして、『剛性を高くする』ということがあります。
ドロームの超高速走行では、想像以上に強いGと空気抵抗がボディにかかります。やわなボディではたわんでしまってタイヤに接触したり空力的なバランスが崩れてしまったりしますし、バンクの縦Gで押し付けられて路面に接触するようになると、路面を傷つけないために走行中止のアナウンスがかかったりしますので、注意が必要です。
できるだけたわみが少なくなるようステフナーなどで補強しましょう。シューグー+メッシュ+ポリカ板なども活用できます。軽量さよりも強度重視でよいかと思います。